ようこそ全書芸一般部(漢字)~コンクールと全書芸展

土屋彩明
(新潟県見附市)

★この記事の内容は2023年現在の物です。将来ルールが変更される可能性もあるので、応募の際は規定をよくご確認下さい。

昇段級試験の作品作りが一段落すると、次に気になるのが「全国書道コンクール」と「全書芸展ですね。
どちらも全書芸主催の書道の大会ですが、この2つはどう違うのでしょう?
以下にザックリと違いをまとめてみますね。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~コンクールと全書芸展土屋彩明新潟県見附市書道の大会違い六本木国立新美術館

大まかに言うとこんなところでしょうか。
どちらも全書芸が主催、文化庁・東京都後援の大会ですが、コンクールは「半紙が主体で子ども~大人までの大会」で、全書芸展は「半切以上の大きな作品が集まる、高校生以上の大人向けの大会」なのですね。

優秀作品の展示はどちらも12月に東京の国立新美術館で、全書芸展の展示会場内の一画にコンクールの優秀作品が展示になります。
ちょっと古いものですが、展示会場の様子の分かる写真を貼っておきますね。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~コンクールと全書芸展土屋彩明新潟県見附市書道の大会違い半紙書き方硬筆ペン字半切作品東京六本木国立新美術館

せっかくなので、それぞれの出品規定についても少し触れましょう。

まずは「全国書道コンクール」から。
こちらはさっきお話しした通り半紙と硬筆作品の大会で、幼児~一般まで広い年代の方が出品できます。
ただ年齢によって出品できる部門が変わってくるので、以下に表でまとめますね。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~コンクールと全書芸展土屋彩明新潟県見附市書道の大会違い半紙毛筆書き方硬筆ペン字半切作品東京六本木国立新美術館文化庁・東京都後援

それぞれ◎と○が付いている部門に出品できます。
ご覧の通り幼児と小学生が「かな半紙」に出せないくらいで、他は誰でも全部門出せますね。
更に幼児~師範は1部門につき一人3点まで出品OKです。

そして高校生は実は「高校部」に加えて「一般部」にも出品できるので「高校生のみ、各部門最高6点まで出品OK」です。
ただ、学生部と一般部は出品料が違うので、出品料の計算間違いにはご注意ください。

○が付いている部門は用紙が指定だったり、課題も規定語句があったりするので、出品の際は要項をよく読んでおきましょう。

◎が付いている部門は臨書でも創作でもOKで、語句も自由です。
つまり普段練習している半紙で「特に良いのが書けた!」という物を取っておいて出品することもできるので、意外と気軽にチャレンジできますね。

逆に語句が自由で文字数制限も無いので、普段の月例では書かないような中字(ちゅうじ/ここでは半紙3~4行書きくらいの、字の大きさが中くらいの作品)や細字(さいじ/半紙5行書きなど、小筆で小さな文字を書いた作品)の作品を書くチャンスでもあります。
この辺りは普段習っている先生とも相談して、課題を決めると良いと思います。

また、この大会は全書芸の会員以外の人でも出品OKなので「夏休みに遊びにきた孫の作品も、記念に一緒に出します」とか「農協や地元の書道コンクール用に練習した作品で良いものが2枚できたので、せっかくだからもう1枚もどこかに出品したい」というパターンもOKです。
特に学生部は出品料が1点500円と手頃なこともあり、会員外からの出品も多いようです。
出品すると、後で必ず賞状か記念品(部門によります)が届きます。

ただ、紺紙・料紙・いろ紙、金泥・銀泥を使った作品は出品できないのでご注意下さい。
出品した作品は返却されませんので、出品前に記念写真や作品のコピーを取るのもお勧めです。

入賞した作品は12月に東京の国立新美術館で展示されるほか、全書芸誌12月号にも掲載されます。

次に「全書芸展」について。
全書芸展は半切以上の大きな作品がメインの大会で、出品できるのは高校生以上の方だけです。
こちらはコンクールと部門の分け方が違い、漢字と「かな」、そして作品の大きさで部門が変わります。
以下に表にしてみますね。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~コンクールと全書芸展土屋彩明新潟県見附市書道の大会違い半紙毛筆漢字かな書き方硬筆ペン字半切作品東京六本木国立新美術館文化庁・東京都後援臨書創作

おそらくこの記事を読んで下さる方は公募部門に出品される方が多いかと思うので、上の表は公募の用紙サイズで書いてみました。
師範資格を取得すると公募ではなく無鑑査出品になりますが、無鑑査だと作品最大サイズがもう少し大きくなって、二尺×八尺くらいまで出品できるようになります。

でも大体のルールは公募も無鑑査も同じで「漢字/かな」「半切以内/半切より大きいサイズ」「創作/臨書」で分けるので、表の一番下の段のように8部門に分かれますね。
以前は違ったのですが、現在は一人でこの8部門それぞれに出品OKになったので、ルール上は一人最大8点出品できます。

そこまでは中々難しいですが、漢字とかな両方に出していたり、漢字の半切と全紙を出している方は時々いらっしゃいますね。
一人で複数部門に出品すると鑑別料の割り引きもあるので、色々出してみたい方は出品要項をぜひよく読んでみて下さい。

鑑別料の話をしたので、出品費用の計算方法についても少し触れましょう。
こういった書道展の出品費用の計算方法は大会によって違い、実はちょっと複雑です。
全書芸展は公募は「鑑別料+出品料+表装料」無鑑査は「出品料+表装料」の合計金額を支払う形になります。

鑑別(かんべつ)というのは聞き慣れない言葉ですが、この場合は「作品の審査」というような意味合いです。
公募部門は作品1点ずつを審査員が「この作品は展示するレベルに達しているか」を審査する(この審査に通った作品が「入選」、通らなかった物が「落選」)ので、この鑑別料がかかるのですね。

無鑑査の方は出品資格が「全書芸で師範資格を取得した人」なので「師範試験に通った人の作品なら、もちろん展示するレベルに達しているでしょう」ということでこの一番最初の審査が省かれ、出品作品は全て展示されます。
なので無鑑査出品の際は「鑑別料」はかかりません。

「出品料」は事務整理費や会場費、作品返送費など大会運営に必要な費用、「表装料」は作品を展示するために表装(ひょうそう/この場合は専門の職人さんが作品のシワを綺麗に伸ばして糊付けし、額に収めること)する費用ですね。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~コンクールと全書芸展土屋彩明新潟県見附市書道の大会違い半紙毛筆漢字かな書き方硬筆ペン字半切作品東京六本木国立新美術館文化庁・東京都後援臨書創作

全書芸展ではこれらの費用に学生割り引きや障がい者割り引き、準師範割り引き、先ほどお話しした複数出品割り引き、無鑑査にも師範初年度割引があるので、対象の方が上手に使うとかなりお安く出品できます。

例えば高校生が半切作品1点出品の場合、2023年現在のルールでは鑑別料無料+出品料が事務整理費のみかかるので1000円+表装料が4000円、計5000円で出品できます。
この辺りは出品要項をよく読んで計算しましょう。

全書芸展で展示された公募作品と無鑑査作品は、全ての作品が全書芸誌一般版3月号に写真版掲載されます。
全書芸の会員の方は、出品したらぜひ3月号を楽しみにしていらして下さい。
公募の方は例年会員以外の方の出品も多いですが、外部の方でも全書芸誌3月号だけ購入することは可能だそうです。
欲しい方は事務局に問い合わせてみて下さい。きっと良い記念になると思います。

ちなみに全書芸展は展示された作品が後日返送されてきますが、これも大体3月頃です。
12月に展示が終わってちょっと間が空くので最初は不安かもしれませんが、大きい書道展の返送は専門の業者さんを挟むので、大体こんな感じで何ヶ月かかかります。
そういう物と思って気長に待ってみて下さい。

また、役員の作品は全書芸誌とは別に「役員作品集」という冊子に掲載されます。
こちらは12月に全書芸展の会場で購入できるほか、送料を払って送ってもらうことも可能です。
全書芸誌にもお知らせが出るので、欲しい方は気を付けて見ていて下さい。

そして該当の方はお分かりかと思いますが、以前にお話しした通り、全書芸では師範受験の際に「前回か前々回の全書芸展に出品していること」が受験資格になります。
師範受験を考えている方は、逆算して計画的に準備をして下さい。
有段者や有級者の方も、全書芸展に出品すると次の昇段級試験の際に「月例条幅出品回数」が加算になるので、その辺りもぜひお忘れなく。