ようこそ全書芸一般部(漢字)~書道講習会に持って行くもの
土屋彩明
(新潟県見附市)
全書芸誌4月号で、ついに今年の昇段級試験の課題が発表になりましたね。
一般部の漢字の昇段級試験については昨年の記事(2023/4/4)でも触れたので、今回は書道講習会の持ち物についてお話ししたいと思います。
まず「書道講習会って何?」という方も多いかもしれません。
ここで私が言っている書道講習会は、例年6月初め頃に東京で開催されている講習会です。
簡単に言うと「今年の昇段級試験で師範受験をする人」と「条幅部で受験をする人」を対象にした勉強会ですね。
詳しくはお手元の全書芸誌4月号88~90ページをご覧下さい。
書道の勉強会は「書いた作品を持ち寄って先生に講評して頂く」「書いて持ってきた作品を先生が朱で添削して下さる」など色々なタイプがありますが、この6月の全書芸の講習会は「会場で書いた作品を先生に見て頂けて、必要があれば朱も入れて貰える」という自由度の高い勉強会です。
ただ会場で実際に作品を書くということになると、荷物もそれなりの量になります。
また、会場ではお手洗いなどは普通に使えますが「筆や硯を洗うのは禁止」です。
普段のお稽古とも条件が違って、私は始めて参加した時、持ち物に随分悩んだ記憶があります。
ちょうど最近片付け物をしていたら当時の持ち物リストが出てきたので、ちょっとここに書き出してみますね。
これから参加される方のご参考になりましたら幸いです。
書き出してみると大体こんな感じですね。
以下に写真も付けて補足していきます。
●半切、半紙、A3チャック付きビニール袋
まず私は新潟からの参加で、なるべく荷物を減らしたくて半切は「楷書・隷書用」と「行書・草書用」の2種類に絞りました。
それぞれ15枚ずつ持って行くことにして数年講習会に通いましたが、特に足りなくなる事はありませんでした。
ちなみに会場の廊下に書道用品店の方が臨時のお店を開いているので、どうしても足りなくなったら半切も10枚くらいから購入できます。
半紙は別に無くても良いのですが、一部分だけ練習したい時や、添削に来て下さった先生が「ちょっとここのところ書いて見せてあげるから、紙を出してごらん」と言って下さった時に、半紙だとサッと出せて便利です。
15枚くらいならかさばらないので、半切と一緒に袋に入れておくと良いと思います。
A3チャック付きビニール袋は、主に紙を入れるのに使います。
講習会は梅雨時ですから、雨が降る年もあります。
書道用の紙は濡らすとダメになってしまうので、ぴっちりチャックで閉じられる袋に入れておくと安心です。
行きは袋1枚に手持ちの紙を全部入れても良いですが、帰りは会場で書いた作品もあります。
余分に数枚持っていると、未使用の紙と添削をして頂いた作品、清書したものなどに分けられて便利でした。
ちなみにこの手の袋は100円ショップに行くと揃っていて、A3サイズの物は文具コーナーか旅行用品コーナーにあることが多いようです。
見つからない時は「A3サイズのチャック付きビニール袋が欲しい」と言うと探してもらえます。
●下敷き、新聞紙、ぞうきん、ティッシュ、風呂敷
講習会の会場は大きな毛氈が敷かれていて、ちょっと墨が飛んだくらいでは床が汚れないようになっています。
でもやはりなるべく汚さないよう、私は自分のスペース(会場に行くと等間隔に番号の札が置いてあるので、何となく個人のスペースはここからここまでくらい、と分かります)に新聞紙を敷いて、その上に下敷きなど道具を広げていました。
墨池の下にも敷くと汚れにくくて便利なので、新聞紙は大体1日分くらいあると良いかと思います。
下敷きは、お家が近い方は大きな全紙用下敷きを持ってくる方もいらっしゃいました(スペース的にはそれでも全く問題ありません)が、私は簡単に半切用の下敷きを持って行っていました。
新聞紙を広げた上に敷くので、やや厚手(私のは3mm厚)の物が書きやすかったです。
ぞうきんは汚した時の用心で持って行きましたが、幸い使った事はありません。
でも持っておくとやはり安心なので1枚あっても良いかと思います。
ティッシュは墨池の片付けに使います。
会場では筆、墨池、すずりなどは洗えないので、洗わずビニール袋などに入れて持ち帰ります。
この時に墨池やすずりに残った墨はティッシュに吸わせると片付けやすいので、多めにティッシュがあると便利です。
ポケットティッシュでも良いと思います。
風呂敷は、荷物をサッと片付けたい時に便利です。
講習会は最初と最後に開講式と閉講式があるのですが、学校ではないので専用の部屋がある訳ではありません。
講習に使っている部屋の一部屋をザッと片付けて、受講生と先生全員が集まります。
私は一度、この閉講式をする部屋の真ん中辺りの席にいた事がありますが、その時は大判の風呂敷に手回り品をまとめてすぐに片付けでき、とても便利でした。
帰りに荷物が増えて鞄に入り切らなくなった時にも使えますから、1枚あっても良いかと思います。
●筆、筆巻き、墨池、水滴、墨液、文鎮、ビニール袋
筆や筆巻きは普段使い慣れたものが良いと思います。
会場で洗って片付けができない都合上「絶対ダメにしたくない取って置きのもの」はあまりお勧めしません。
墨池(ぼくち)はあまり馴染みがない人も多いかもしれません。
プラスチックでできた容器で、写真の物は持ち手と兼用の筆掛けと、蓋が付いています。
すずりの代わりに使う物で、すずりより軽くて壊れにくいので便利です。
講習会にはもちろんすずりを持ってくる人もいますが、私が参加した時は墨池の人もかなり見かけました。
荷物を減らしたい方は墨池でも良いかと思います。
(念のため申し上げますと、これは漢字の参加者の話です。かなはまた違うかもしれません)
水滴(すいてき)も人によっては普段あまり使わないかもしれませんね。
中に水を入れておいて、墨を磨る時や、墨の濃さを薄めたい時に少量水を垂らすための道具です。
講習会は午前午後と続く長丁場なので、蓋付きの墨池でも墨が段々と濃くなってきます。
少量水を垂らして濃さを調節できると便利ですね。
水滴は書道用品店に行くと専用の物も売っていますが、要するに水を垂らせれば良いので、スポイトや100円ショップのしょうゆ差しなどを使う人も多いです。
私もスポイト付きのインクの空ボトル(小さくて軽いので)を使っています。
意外かもしれませんが、墨液は会場のほぼ全員が持ってきています。
講習会の時間内で墨を磨るのは時間がもったいないし、墨液を使った方がたくさん書けます。
もちろん普段大事な作品は墨を磨って書きますが、講習会は勉強と練習の場です。
講習会で墨液を使っていても、先生方から特にお叱りを受けた事はありません。
家で磨った墨をペットポトルに詰めて持参する方に会った事もありますが、この方は「陽気で腐るかもしれないから」と別に市販の墨液もお持ちでした。
文鎮も普段使っている物で良いと思います。
私は鞄に入れやすい二つに分かれた黒檀の文鎮を使っていました。
ビニール袋は筆を片付けるのに使います。
墨が付いたままの筆を穂先からビニール袋に入れ、そのまま筆巻きに巻くと、乾かずに綺麗に持ち帰れます。
昼休みなど席を外す時も、こうしてビニール袋に筆を入れておくと固まらずに便利です。
●講習会手本、封筒、持参作品、落款印試し置き用
書き込みが多くてあまりに見苦しかったので写真は省きますが、講習会手本は忘れずに必ず持って行って下さい。
事前に拡大コピーをしておいた物を一緒に持って行くと大きくて見やすく、余白も増えるので要点を書き込めて便利です。
書き込みは赤や青など色ペンで書くと後で見付けやすいですね。
また、講習会手本が送られて来た時の封筒は、受講証や諸注意プリントもあるので、そのまま丸ごと持って行くと便利です。
講習会ではもちろん会場で作品を書けますが、添削用の最初の一枚は書き上げて持参される方がほとんどです。
昇段級試験の中間報告くらいの気持ちで、印までついて仕上げた物を持参すると良いかと思います。
この時、草稿や字典から拾い書きした半紙なども持って行くと「この字はこっちの形の方が良いよ」などアドバイスを頂けたりもするので、参考に持って行くと良いようです。
また、字書を持って行くかどうか迷う方も多いと思いますが、個人的には「遠方の人が腰を痛めてまで一冊丸ごと持って行く必要はない」と思います。
必要そうなページだけコピーして持参すれば、さほど不便なく勉強できます。
落款印や印泥もやはり持参するか迷うところですが、私は「和紙に印を押し、乾いてから切ってポストイットに貼り付けたもの」を持ち込んで使っていました。
これを貼れば会場で書いた作品でも印の位置を先生に見て頂けますし、位置が良くなければはがして置き直しもできます。
そして貼ったまま家に持ち帰って、同じところに本物の印を押せば良いのです。
これはとても便利だったので、よろしければぜひお試し下さい。
講習会のお勧めの持ち物、大体こんなところでしょうか。
ちなみにこちらの講習会はとても人気で、申し込みは先着順です。
参加されたい方は全書芸誌4月号の案内をよく読んで、ぜひお早めにお申し込み下さい。