ご縁その1

ペンネーム悪筆子

天皇夫妻の英国ご訪問映像のいつもどんな人にも等しく丁寧に誠実に手を振り会釈されているご様子に、一昔前うらぶれた我が町を通って行かれた時のことを思い出した。
まだまだ皇太子時代のこと、シャッター街で閑散とした夕刻の街を車が通るというので見に行った。
人影も疎でほんとうに通られるのか一瞬疑ったが見物人がパラパラと集まってきた。が、警察官はまだいない。しばらくして数名の目つきと身のこなしが異様に鋭いテイシヤツジーパンのようなラフな姿の若い男女が数名現れると警官も数名立った。と同時に信号が点滅して消え車の流れもなくなっていた。黒塗りの車の車列が現れ、4台目くらいの車内を煌々と照らしクリーム色の座席がはっきりわかる車で皇太子が沿道をしっかり見て手を振っておられる。まるでよくきてくださいましたと言っているような誠実な姿と車内を思い切り明るくする心配りに思わず手を振ってしまった。
気がつくと車は去りまた信号がついた。目つきの鋭い若い男女の姿はいつのまにか消えていた。