お習字こども質問箱~どうして大人の作品はにじんだり、かすれたりしているの?
土屋彩明
(新潟県見附市)
Q 大人の書道の作品は、時々すごくにじんだり、かすれたりしているものがあります。あれはどうして?
A その方が格好いい時に、意識してやっています。プロの歌手が意識して声をかすれさせたり裏返らせたりするのと同じで、実はすごく高度なテクニックです。
小学生や中学生のうちは「極端ににじんだり、かすれたりしないように書きましょう」と言われるのに、大人の書道作品はそうでない物もあって不思議ですよね。
ああいう作品は「にじんだ方が格好いいところをにじませて、かすれた方がいいところをかすれさせて」書いています。
これは歌をイメージすると分かりやすいと思います。
皆さんが普段学校で合唱をする時は、音程もリズムも楽譜の通りに習うでしょう。
でもプロの歌手の中には、ここ! と強調したいところで意識して音程やリズムを崩したり、声をかすれさせたり裏返らせたり、複雑な歌い方をする人がいます。
上手な人が歌うと、それがすごく格好いいんですよね。
思い切りかすれたり、にじんだりしている書道作品はそれと同じです。
上手くいかなくてああなっているのではなくて、実は計算の上でやっているすごいテクニックです。
ただ、歌でも書道でも、すごいテクニックというのはすぐにできる物ではありません。
歌を歌う人もまずは楽譜通りに歌う練習をするのと同じで、書道もまずは「極端ににじんだり、かすれたりしないように書ける」技術が必要です。
小学生や中学生のうちは一定のペースで書けるよう指導されるのは、この基本技術を身に付けてほしいからです。
興味のある人は、大人になったらぜひ、思い切りにじんだり、かすれたりする作品にもチャレンジしてみて下さい。
その時にはきっと、いま学んでいる基本技術が役に立つはずです。
こちらは私の先生の作品です。
かすれ方がとても格好いいのでご紹介します。