隣町
ペンネーム悪筆子
山から海に拡がる大きな隣町に親切なおばあさんが詳しくて取り寄せもしてくれる老舗文具店があると知り行ってみる。城下町でもある隣町は宿場町とは違いどこか品があり、その代わり少し風通しの悪さも伝わる。
大きく立派なその店に入ると早速筆のコーナーに。重たいガラス戸ごしにみていると、ごめんなさい、これ動かしますねと店主がガラス戸を動かしてくれる。品のいい年配の店主の字とおもわれる綺麗な字の解説つきの、札が貼られて筆がたくさん並んでいる。筆を二、三取って半紙も見せてもらう。それからニ階に上がり条福の半紙もみる。廃盤の札が貼られた箱もあり、数少ない中から見せてくれる。会計の時馴染みの紙屋さんの名前を出すと知っているとのことだが、もうとっくになくなった修理もする小さな万年筆屋の名前を出され、懐かしかった。
役所に納めるのが主な老舗なので書道関係は期待していなかったが家で早速試してみるとどれもいい品で書き心地もいい。
翌日街の馴染みの店に行き店の名を出すと流石に店の歴史から知っていた。和紙ありましたよというと、在庫がまだ残ってるのでしょう、うちは全部売れてもうない、和紙はもうないですよと言われた。
筆の名前を調べると広島の筆屋さんだったが和紙はどこの店か出てこなくて、同じ銘柄らしきものでまとめたものが、ラッテンに出てきたがもうあるだけでおしまいのような雰囲気がした。やはり和紙は姿を消していると再認識した。
