編集部放談「こう見て欲しい全書芸誌4」巻頭言・競書作品

全書芸スタッフ

2020年70周年を迎えたロングセラー月刊書道競書雑誌『全書芸』のバックナンバーから歴史・魅力に迫ってまいりましょう。

1983年度(昭和58)編集部放談「こう見て欲しい全書芸誌1~4」の最終回。
参加者は、竹石古谿・宇賀寿子・淺沼一道・酒井洋龍・梶田越舟の5名の諸先生方です。

「こう見て欲しい全書芸誌1」表紙・表紙裏・本誌の特色
「こう見て欲しい全書芸誌2」鑑賞ルーム・役員習作・参考作品
「こう見て欲しい全書芸誌3」古碑法帖研究・図版・参考図書
もぜひご覧ください。


全書芸誌をご購読されている皆様、120%全書芸誌を活用できるよう編集部からのメッセージをお届けします。


全書芸誌の購読歴が40年!!という方は、全書芸誌の魅力を一緒に振り返ってまいりましょう。


そして、はじめましての方は、70年間基本的に同じスタイルで構成されている全書芸の見どころや品格を共有してまいりたいと思います。



巻頭言の重み

芸事は計数や単純な法則のみでは律しきれないもので、その人の感覚、性情に深いかかわりがあることはご存知の通りです。書の場合も作品や学び方の開設には、必ずといってよい程、精神面について触れられております。


本院の標榜する「純正書道」の意味合いも、単に古典を基にした技術の向上を指すだけでなく、道の修業として人書共に高めていくことが求められていると承知しています。従って、本誌の巻頭言は読者にとって大きな意義をもつ1ページであると思います。

代表が執筆者ですから、本院の主張そのものと解釈してよいと思います。けれども、毎号の一文は立場上とか構えた文章でなく、豊かな経験と見識で綴られた一書人の随想録で、読んでいるとそのままそっくり自分の在り方を問われているような気がするんです。大変有益で感銘しています。

日常生活の諸々の事象について深い洞察力が働いていませんとあの様には書けません。身近な具体的なお話で、文章表現とも併せて説得力がありますから色々と思い当り悟ることも多いのでは――。書は先生から教えられる部分の他に自ら悟ことが大事だと思います。


誰もが納得できる平易な事柄の中で、所を学ぶ者の心構えや、古典の貴重さ、名買うな目標を持って学習することの大切さなど多角度から語ってくれています。


小中学生や高校生を指導されている先生方にぜひ活用していただきたいですね。
現に、授業の時に引用したり、読んで聞かせたりしている先生もいるんです。


その都度認識できれば結構なことですが、読み過ごしたものが後になって合点がいくこともある。あの巻頭言は、書を習っている人の目でみた文章だけれども、書を離れて書を説いているともいえる。もっとも、筆を持たない時の方が、かえって書を考えるじゃないかな。あの欄には、いつも執筆者自身の書作品が載せてあるので文章との関連をあれこれと思うこともあります。もちろん、多彩な作品は鑑賞資料として十分役立つはずです。


人によって対応は様々でしょうが、その意を体して、お互いが心技両面の向上につとめていきたいものです。

競書作品

古法帖と近世大家の臨書を主体にした、他にあまり類のない方式で一貫してきています。


漢字の規定でいえば、解説文の読解はもちろん、かご字図版なども参照して手本の姿形や用筆の調子を綿密にねばり強く習い込んでの清書にして欲しい。
臨書の場合は手本の部分だけでなく口絵の原帖図版で前後の関係や趣きをつかんで書くように心がけなければ。


かな条幅でも、いきなり解説者の参考手本にさまよう様なことなく、原帖の筆意をしっかり学んで、構成も自分で吟味しながらまとめていく気持ちが望まれます。


汲みとる力が問題なんですよ。一朝一夕に目は高くなりませんからね。古碑帖の見方・考え方を重視して記事を特設したのもその辺の配慮からです。


独習者に多く見られるのは、塗ったような線になっていて筆勢に気づいていない。のび、張り、はずみ、引締め、連綿線をつよくといった用語類はこの点を指したもので、運筆の呼吸に留意してもらいたい。


半紙も作品であるからには、紙面の調和を考えたいですね。字粒、位置、余白との兼ね合いや、墨量、濃度の感じも。


写真版は優秀作品の掲載が建前になっていますがどうなんでしょう。
概ね内容の優れた作品ですが、時には、いい意味で特色のあるものとか、問題点を含んでいる作品を選択する場合もあります。


毎号の写真版と短評に目を向けることも大事ですね。
他人の短評を読むことで理解できることも多いです。



最後に事務局からの要望を挙げて終わります。


条幅部・半紙ともに〆切日の厳守。(←よろしくお願いいたします笑)




現編集部へのご意見・ご感想、事務局まで。


今後も、全書芸の魅力に迫るテーマでバックナンバーよりお届けしたいと思います。