三つの書性
ペンネーム ひろ
前回お話した桑原翠邦先生の巻頭言集に「三つの書性」という題目があります。ちょっと難しいですが、今回はそのことを取り上げてみます。
主な内容
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書のおもむきの根本をなすものは心であり、この心を「情性」とよぶ。
書には「情性(芸術)」、「徳性(道徳)」、「霊性(宗教)」がある。
その関係は『色』と『音』と『光』の関係に似ている。
「情性」は書の芸術性を決定する上で大切なもの、「徳性」をそなえると更に高次なものとなる。
昔の碩学の高儒・偉人・傑士の書が珍重されている所以。
書には「徳性」の他に「霊性」がなくてはならない。
村正の刀が、持っている人に災いをもたらし、絵においても同様なことが起こっている事実がある。
書の「霊性」については、体験と信念とを持っているが、古来これに及んだ人がいない。
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私は無宗派で霊感もありませんが、目に見えない世界を信じるほうで、父、母が亡くなってからはよりそう思うようになりました。
書に霊が宿る……というと、かなり前のことですが、五島美術館で《副島種臣の書展》があり、その作品の異次元的な書には、館内の雰囲気も手伝って、何かが宿っているような不思議な感覚がありました。
感性や道徳、精神性など、心に関する難解で高尚な書ではありますが、皆様はどう思われますか?
また、臨書そして創作と、私達が続けている、というより、続けざるを得ない、惹き付けてやまない……書の持つ「魔性」という点も、気になるところです。