心に沁みた言葉「筆を一生のともだちに」
牽洋
誰にでも、何かを始めたら、辞めると勇気ある決断することがある。
ある日、書道のお仲間Aさんが、辞めた。ことを知った。
稽古場にも来なくなった。
それは突然なもので、
それまで、とっても熱心で稽古場には、毎回、何枚も何枚も書いたものを持参し、師のアドバイスを受けていたのを目にしていた。
だから、
あんなに熱心だったのに……
数枚しか書かないで、
毎度「この中から先生選んでください…」と不真面目な自分とは大違い。
稽古場でAさんとは、いつもほんの10分ほどの時間を共有するだけだったが、
凄いな!Aさんの頑張ばり半端ない!と自分にはなかなか出せないエネルギーを感じていた。
このAさんの頑張りは、他の周りの方の目にも映っていたようで、
Aさんが辞めた後、Aさんと直接話をされたという大大先輩の方にお会いした。
「続けることが一番難しいわよね」
「長い書道人生、辞めたいな。って思った時は自分も何度もあったわよ」
「腰が痛い。膝が痛い。病気や介護。なんだかんだ理由をつけて辞める口実を作って……」
そんな時は、
「筆を一生の友達だと思って!」
とAさんに伝えたとのことだった。
大先輩たちがどんな思いで筆を持ち続けてきたか、
歩んできた道中は紆余曲折だったに違いない。
私の師も、
日頃「書く苦しみの中に、楽しさがある」と言っている。
それを乗り越えた大先輩たちが、
今、筆を持ち続けて楽しい書道LIFEを送っているんだなぁ……と更に尊敬の念が高まった。
苦しくなるまで、まだ書いていない自分には、まだ経験できていないわけだが、
この先、万が一、苦しみが襲ってきた時には、
この
「筆を一生のともだちに」
を思い出したい。
長年続けてきたものに区切りをつけることも
勇気がいる決断だから、
それは、それで、その決断も認めたい。
人生、スポーツでも芸術でも研究でも何でも、思いを注げる何か一つのことを見つけられたら幸せだ。
今の自分の目標は、
楽しみながら細~く・長~く筆を持ち続けること。
先生方のお手本にあるキレッキレの線をうっとり眺め続けられる幸せを噛み締めている。
以前ベテラン先生から聞いた
「続けることは才能です」
という言葉もモチベーションの一つになっている。
しばらくして、
稽古場のカレンダーにAさんの名前が復活していてとってもとっても嬉しかった。
仲間がいるうちは、みんなで楽しく筆を持ち続けていこう。
もし、いなくなっても
「筆を一生のともだちに」