子どもに教えるコツ~書き始める場所~

土屋彩明
(新潟県見附市)

前回の「子どもに教えるコツ〜子どもの書く字は活字調〜」に続き、今回も子どもの書く字の癖についてお話ししたいと思います。

これは特に習い始めたばかりの子によくみられる癖ですが「1本目の横棒を、いつも紙面の同じ場所から書き始めてしまう」子が結構います。

書き始める場所

図でご説明するとここです。

1本目の横棒が長い字も短い字もおかまいなしに、この赤い点の辺りから書き始めてしまう子が一定数いるのです。

何故ここから書くかというと、おそらく「ここから書き始めると、大抵の字が枠線内に収まるように書けるから」なのでしょうね。

例えばもっと上から書き始めてしまうと「力」「木」「花」のように「1画目より2・3画目の方が上にくる字」が、入りきらなくなる可能性があります。

でもこの赤い点付近から書き始めれば、上にスペースが残っているのでこういったタイプの字でも対応できます。

また、上下左右の全方向にスペースが残してあるので、「国」「日」「口」などの四角い字でも真ん中に書けるし、「城」「晴」など左右に分かれる字も大丈夫。

「義」「優」のような画数の多い字でも大体枠線内に収められます。

思い返してみると、私も子どもの頃は1日中、ノートや作文、連絡帳、放課後は塾と、本当にたくさんの文字を手書きしていました。

小学校高学年〜高校生くらいの頃は、時間割によっては1日2000文字くらい書いてたのではないでしょうか。

九成宮の全臨くらいの文字数ですね。

そこまでいかなくても、現役学生は間違いなく書家よりたくさんの文字を、しかも短時間に書く生活をしています。

そう考えると「この字は画数が多いから少し上から書き始めないと」「この字は横長だから左端から書かなきゃ」などと「1字ずつ書き始めの位置を考えて変える」というのは中々難しいでしょう。

なので経験則で「大体どうにかなるオールマイティーな1点」から書き始めてしまうのも、無理はないと思います。

でもそれだけに、お習字の時は「1字1字を考えながら丁寧に書く」という経験をぜひして欲しいですね。



そしてここからが教える側としてのコツなのですが、

「大体ここから書き始める」という場所が決まっているということは、教える方としては便利でもあるのです。

あらかじめ書き始める前に
「この線は多分、あなたが思ってるよりも短いから、ちょっと中心線寄りから書き始めるといいよ」
「この字は縦長だから、お手本は意外と上から書き始めているよ」
等と声をかけると、説明がスムーズです。

書き始める場所」が手本と違っては、お手本通りの字が書けるはずがないのです。

まずは「どこから書き始めるか、お手本をよく見てから書き始める」癖をつけるところから、教え始めたいですね。