子どもに教えるコツ~ひじは横向き~
土屋彩明
(新潟県見附市)
前回「子どもの書く字は活字調」、前々回「書き始める場所」と字の形についての話が続いたので、今回は「毛筆で字を書く時の姿勢」についてお話ししたいと思います。
お習字の基本の姿勢は、正座でもイスでも大体同じです。
机とお腹の間がこぶし1つ分空くように座り、背筋はまっすぐ。
そして肝心なのが腕の向きですね。
ひじを横向きに突き出すようにして、ひじから手首までが水平に近い姿勢が理想です。
こう教えていると、時々子どもたちから「どうしてひじを横向きにしなきゃなの?」と聞かれるのですが、これは簡単で「ひじの可動域をフル活用するため」です。
普段の生活では気づきにくいのですが、実は「ひじ」は曲がる方向も決まっているし、動く範囲がとても狭い関節です。
腕をまっすぐのばした状態から、手首を肩に引きつける動き、この範囲でしか動かせません。
これはきっと、四つ足の動物だった時代の名残なのでしょうね。
馬などを思い浮かべると分かりやすいでしょうか。
この関節は変にあちこちへ曲がるより、前から後ろへ動くだけの方が速く走るのに都合が良さそうです。
このようにひじの動かせる範囲はとても狭いので、これをフル活用しようとすると、はじめにお話ししたような「ひじを横向きに突き出すようにして、ひじから手首までが水平に近い」姿勢になります。
ちなみに、この姿勢は自分の腕の重さを上腕から背筋にかけてで支えることになるので、慣れないとキツい姿勢です。
でも繰り返しこの姿勢を取っているうち、段々と自然に身に付いて楽になってくるので、始めたばかりの子にも心を鬼にして「ひじは横向きですよ」と言い続けるのが一番良いようです。
ところで、垂直な黒板に文字を書く学校の先生などは、やはりひじを横向きに、ひじから手首にかけてが黒板と平行になるようにして板書する方が多いようです。
実はこれ、お習字の基本姿勢より更にもう1段階キツいポーズです。
だからでしょうか、学校の先生をされている方はお習字を習っても、姿勢は最初から綺麗な方が多い気がします。