紙の上下2

髙市乾外

紙の上、下。どうでもいいっちゃあどうでもいい。
筆も、墨も。どう使おうがその人の勝手。

でもね、物を扱う姿にその人の生まれ育ち、品が出ることがある。
ひいてはそれがその人の書、芸術にも影響してくることは、経験上理解できる。

桑原翠邦先生は、床や畳の上でお書きになるとき、紙を踏まなかった。
我が師淺沼一道も。巨大な紙は不可能だけど。
鳴鶴、天来先師はだいたい机上で書かれたから踏みつけることもなかったろう。

小さな半紙は別にして、紙はだいたい、折りたたんで売られている。
ということは折り目、折り皺(しわ)ができる。だいたい四尺の全紙、半切は、三つの「谷折り」と一つの「山折り」。

どっちを上にします?
「谷折りから」に慣れてしまうと、山折りが先にくると筆の働きが鈍ってしまう。
いや、邪魔くさくていやになる。気持ちの問題かな?
でも、気持ちよく書きたいですよね。
いい紙、いい筆、いい墨で。そしていい状態で。

先師はそんなことにも敏感だった。

紙の上下画像