隷書(乙瑛碑)を学ぶ【二】
二回目は、乙瑛碑の具体的な特色や注意すべきポイントなどをお話していきたいと思います。
- 書く場所の選び方
条幅に書く部分を選ぶ場合は、句切れに注意して下さい。
A・・・全て欠損している文字は省いても構いません。
B・・・“而”などの接続詞は省いても構いません。(むしろ省いた方が良いでしょう)
12月~3月号の課題部分に関しては、A・Bに該当するものはありません。
今後の作品づくりの参考にして下さい。
※注意
月をまたいでの語句の選定は厳禁です。各月の間とも摩耗の激しい部分が、一、二行カットされており続いていません。したがいまして、多字数(三行書き等)の作品は難しくなります。 - 乙瑛碑の特色
・緊密な構造でガッチリとした感じである。
・線は重厚で力強く、少しのゆるぎもない。
・文字の中心線を軸にして左右のバランスを崩さないように構成されている。
・派手さはなく、中正で、健やかな八分隷の正宗ともいえる作品である。 - 書法・点画の特色
イ.波磔:曹全碑のように長く流麗ではなく、少し短めで充実した力感がある。
ロ. 引き締まった形 (背勢):多くはこの形につくっている。
※例外:向勢の形も少ないが出てくる。
ハ.左払い:おおよそ四種に分けられる。
二.独特な口の書き方:「口」は単純な長方形ではない。波勢が働き、各線には、うねりやふくらみがある。接し方にも注意。
ホ.独特な筆使い
- 注意すべき字
約2,000年前の石碑ですので、良く見える所を掲載しているとは言え、やはり分かりにくい字が散見されます。見えにくくしている要因には、以下の4つのことが考えられます。
・石の風化により線が細くなったり消えたりする。
・石に何らかの原因で傷が入る。
・全拓から切り貼りして剪装本 (帖仕立て)にする時、切り落とされる。
・拓本を取る時の墨の汚れ、しみなど。
しかし、上記の原因で見えにくくなった文字も、原帖全体を見渡すことで大半が解決されます。同じ文字や似たような字が必ず出てきます。全体を見ることは、大変重要なことです。(思わぬ発見もありますよ。)字典の活用が大切なことは言うまでもありません。
これからは、各月の注意すべき字について解説していきます。
最後に、昇段級試験の締め切りが1か月ほどとなりました。
じっくりと取り組んで少しでもレベルの高い作品に仕上げてください。
皆さんの作品を審査するのを楽しみにしています。