十勝・帯広 翠邦浴 vol.9 帯広市立柏小学校所蔵作品

千葉豊翠
蒼庭子書院(北海道帯広市)

桑原翠邦先生の十勝にある作品のご紹介が、気が付けば約一年ぶりとなってしまいました。この間、少しずつですが翠邦先生の作品を掘り起こしてきました。今回から数回は学校に所蔵されている作品をご紹介しますね。

既に帯広小学校芽室高等学校の二校をご紹介しました。

今回は帯広市立柏小学校です。

大正10年(1921年)開校。

帯広市が昭和32年に川西村・大正村を編入合併する前では、3番目に歴史の長い小学校です。(帯広小学校が最初の開校です)令和3年1月に開校100周年を迎えました。

学校名、校章の「柏」の由来は、開拓の頃から十勝平野に自生していた代表的な名木であることから命名したそうです。

(※学校沿革・校名由来)

この柏小学校には現在翠邦先生の作品が二点あります。

そのうちの一点が校訓「強く 正しく 明るく 清く」です。

千葉豊翠十勝・帯広翠邦浴 vol.9帯広市立柏小学校所蔵作品上原桑原翠邦
校訓「強く 正しく」「明るく 清く」


千葉豊翠十勝・帯広翠邦浴 vol.9帯広市立柏小学校所蔵作品上原桑原翠邦
校訓「強く 正しく」「明るく 清く」


千葉豊翠十勝・帯広翠邦浴 vol.9帯広市立柏小学校所蔵作品上原桑原翠邦
校訓「強く 正しく」「明るく 清く」



この校訓揮毫には少しばかり経緯があります。

柏小学校の校訓は昭和19年に制定されました。学校関係者が偶々来帯されていた翠邦先生に校訓の揮毫をお願いし、その校訓は旧校舎の体育館に掲示されました。

昭和53年新校舎完成を機に、同校の教師の方が新たに校訓を書かれたそうです。

しかし、長年生徒たちのバックボーンとなっていた翠邦先生の書いた校訓を是非-という声が関係者の間で高まり、遂に昭和59年10月、『翠邦先生の校訓』の復活となったのです。

先生79歳の作品です。

校訓には珍しく二幅に仕立てられ、体育館のステージの両脇に高々と掲げられています。書かれた『作品』は、正に校訓の理念を体現するかのような『風格』を感じます。子供たちに向かって、正面から、堂々と。

校訓を納めるにあたって翠邦先生は13枚に亘るお手紙を書かれています。これがまた読んでいて大変楽しいものでした。揮毫の依頼があってから時間がかかったこと、作品が大きいため書く場所の選定に苦慮したこと、紙は中国の二層紙をはじめから使うつもりで用意し、墨は天爵40挺を13人で手分けして磨ったなどなど・・・

この手紙は学校の資料室のショーケースに裏打ちされ保管されています。今なおきちんと保管維持していただいていること感謝に堪えません。

それにしても最初の校訓を何とか写真ででも見たかった・・・

柏小学校に残るもう一点の作品がこれです。

千葉豊翠十勝・帯広翠邦浴 vol.9帯広市立柏小学校所蔵作品上原桑原翠邦
陸游『泛瑞安江風濤貼然』


この作品を資料室で拝見した瞬間に、思わず「翠邦先生だ!」と声が出ました。

翠邦先生の真骨頂ともいえる隷書。時の経つのも忘れ作品の前にたたずんでおりました。

所蔵の経緯は明らかではありませんが、捺された印からおそらく最初の校訓と一緒に書かれたものではないかと思います。

やっぱり、古い学校には先生の作品があるっ!

そんな思いを強くした次第です。

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