福鶴舞う!『第2回十勝書芸藝展』幕を閉じる
令和5年6月29日~7月4日『第2回十勝書藝展』が、帯広市民ギャラリーに於いて開催されました。
今回の書展の特別企画は、「大福鶴と大扇面展」と「桑原翠邦先生顕彰展」
この企画については、昨年の10月半ばから動き出すこととなりました。
大福鶴と大扇面展
鶴は、古代中国から日本に伝わり、目出度い鳥として尊ばれてきました。
その鶴を、反古紙で折ってみてはどうか?
捨てられるはずの紙が、たちまち優雅な鶴となり展覧会場で舞うのです。
しかしこの夢のような構想から、私達の長い鶴との物語が始まりました。
福鶴とは、「福を招く」と伝えられている折り鶴のことです。
今回、展示された折り鶴は「妹背山(いもせやま)」と呼ばれる折り方で、2羽の鶴が中央の羽の部分で繋がっているのが特徴の蓮鶴です。
それは、固く結ばれた、夫婦・親子・友人同士の象徴とされています。
正に、この展覧会に相応しい!
ということで作業が始まりました。
しかし……いっこうに鶴は折れません……。
それもそのはず、画仙紙は、折る為の紙ではないのですから。
画仙紙を6枚貼り合わせた、横165センチ、縦330センチの紙は、薄く柔らかく巨大過ぎて、大の大人が何人張り付いても、鶴の形には程遠く……
漸く完成したのは、会期数日前でした。
更に、その鶴は舞わなければいけないのです!
テグス(釣り糸)を羽、胴体、頭、尾、何箇所にも括り付けて、デモンストレーションするも……
落下……想定外に、墨を含んだ画仙紙は重かったのです。
果たして……どうなるのか…
また、福鶴を引き立てるように、その背景を彩る大扇面を配しました。
紙は、安価な障子紙を扇面の形に型取った物です。
墨の色合い、滲み、カスレ等は試す事も出来ません。
何故なら、全て手作りにつき、実行委員1人に1枚づつ!
正に、失敗は許されない作品制作だったからです。
何とか全員が書き上げて色画用紙に貼り付け、アイロンをかけシワを伸ばす…
なかなか伸びないシワにも苦労しました。
壁面は、横10メートル、縦3メートル、それを覆うのはロール不織布です。
この展覧会のテーマカラーである、ダークブルーで、真っ白な壁面を、どのようにデザインするか?
最後に、まさかの、布が足りなくなる!アクシデントも発生し……!
しかし、終わってみれば、白の余白が素晴らしい!とのお褒めを頂き、書作品にも通じる
余白の美しさを学んだのです。
桑原翠邦先生顕彰展
会場奥の一段高い所に、二曲一双の金屏風が飾られました。
桑原翠邦先生42歳の作。
飾られた瞬間、何か、会場全体の空気が変わったように感じました。
そして、先生のお作品が、全てを見守って下さっているようでした。
このような貴重な時間、空間を、大切にしたい、という思いから翠邦先生の屛風を囲むように、パーテーションをデザインしました。
そして、それは、白樺の木でなければいけなかったのです。
帯広の地でお生まれになり、この地に数多くのお作品を残されている先生に、十勝帯広市の樹木の代表とされる白樺は、一番お似合いだと思いました。
白樺の木の太さは?
高さは?
ロープの色は?
皆で意見を出し合いながらデザインを決め、地元の白樺細工職人の方と、何度も打ち合わせし、ついに!「白樺ポールパーテーション」は完成しました。
心配していた白樺ポールの高さは、先生の大切な屏風の文字を邪魔することなく、程良い高さに収まり、安心しました。
赤い毛氈の上で白樺ポールパーテーションを前にして、先生の金屛風の文字は、
第2回十勝書藝展オープニング~エンデイング
令和5年6月29日午前10時
いよいよオープニングです!
全書芸会員作品数160点、出品者数134人の作品、「大福鶴と大扇面展」、「桑原翠邦先生顕彰展」、「鶴に願う」折り鶴コーナーがお披露目されました。
2歳から96歳迄の力作は、広々とした会場を埋め尽くしました。
そして………あれほど苦労し、心配もし、不安だらけだった2羽の鶴は……???
まるで、何事も無かったかのように、優雅に舞い、入口正面で来場者を迎えてくれました。
もちろん、会期中、落下することも無く。
また、初日のサプライズ!!
全日本書芸文化院岩本社長ご家族が、早々に、東京から駆け付けて下さったのです。
愛らしい涼加ちゃんの笑顔は、オープニングの緊張感を和らげてくれました。
ご多忙の中、お気遣い頂きました社長ご夫妻に改めてお礼申し上げます。
こうして連日、会場には、家族連れ、友人、知人、大勢の来場者で賑わいました。
久しぶりの再会を喜び語り、互いの作品に見入る姿、
また、我が子の作品を探して、家族が寄り添い写真を撮る姿、
どれも、微笑ましく、優しい時の流れを感じました。
はるばる東京、札幌等、十勝管外からも先生方にお越し頂き、新たな出会いやご縁から、書の世界に広がりを感じることが出来ました。
それも展覧会ならではの醍醐味ではないでしょうか。
最後になりますが、お陰様で「第2回十勝書藝展」を、無事に終えることができました。開催に当たり、ご協力頂きました皆様に心より感謝申し上げます。
“福鶴はついに舞うことが出来ました!!”
願いを叶えてくれたのかもしれません。
そして、諦めずに強く願う…子供達が折り紙に書いた願い事もきっと叶うことでしょう。
いつの時も、諦めない…叶うと信じて!
「第3回十勝書藝展」で、また沢山の出会いがありますように…
『書』と『水』と『音』と『鶴』end
第2回十勝書藝展
2023/6/29(木)-7/4(火)
10:00~18:00
*最終日16:00まで
北海道・帯広市民ギャラリー
(帯広市西2条南12)
*JR帯広駅地下1階
主催 十勝書芸展実行委員会
後援 全日本書芸文化院
実行委員長 千葉豊翠
全日本書芸文化院会員、元会員による書展です。