ようこそ全書芸一般部(漢字)~線引き半紙の作り方
土屋彩明
(新潟県見附市)
前回はコンクールと全書芸展のお話をしました。
こうした大会では月例半紙や月例条幅のような「白い紙に文字が書いてある」タイプの作品も出せますが、「白い紙に枠線を引いて、その中に文字を書く」タイプの作品も出品できます。
もちろん枠線は無い方が文字は大きく書けるのですが、細かい楷書を整然と並べて書きたい時などは枠線があった方が書きやすい場合もあります。
また、見た目にも普段の月例などと雰囲気が変わって面白いですね。
私もたまにこうした枠線のある作品を作りますが、他の先生から「あの枠線付きの紙はどうやって作るの?」と時々お尋ねを頂くので、今回私の作り方をご紹介したいと思います。
まず最初に、作品の文字数を決めます。
ここで気をつけたいのが「むやみに文字数を少なくしないこと」です。
例えば「たくさん書くのは大変だから、3行か4行くらいにしよう」とすると、文字が中途半端なサイズになり、大筆でも小筆でも書きにくい大きさになります。
ぜひともその大きさで書きたいならそれも良いのですが、初めは「小筆で書きやすいサイズ」を意識して文字数を決めた方が失敗しにくいです。
小筆で書きやすい大きさは書体や人にもよりますが、大体半紙に1行8~10文字くらいでしょうか。
上下左右を少し開けて、マス目を正方形に近いバランスにしようとすると、入る文字数は以下のようになります。
それぞれ入る文字数としてはこういうことになります。
これは楷書など正方形に近いマス目にしたい場合で、篆書や隷書など縦長や横長のマスにしたい時は、ここから足したり引いたりして調節します。
書きたい文章や法帖の文字数とも相談しながら、文字数と行数を決めましょう。
この時、最後に落款を入れる場所も考えておくと後で困りません。
図にも示した通り、最後に細い行を追加して落款などをここに入れるまとめ方もあります。
どんな枠線にするか決まったら、実際に半紙に枠線を書いてみます。
後でコピーを取りたいので、線は黒いマジックで引くと便利です。
書けたら四隅にも印をつけて、半紙が真ん中に来るようにA3サイズでコピーします。
このコピーの上に半紙を載せて、ペンで枠線を引きます。
ペンは「油性」か「耐水性」もしくは「顔料」や「ピグメント」と書いてあるものを使いましょう。
水性のペンで枠線を書くと、後で表具(ひょうぐ/この場合は作品がピンとするように、専門の職人さんが別の紙に作品を貼り付けること。貼り付ける時に水を使います)をする時にインクが溶けて流れてしまうので危険です。
私は「カラーマスター」という水性顔料マーカー(文房具ではなく画材コーナーによくあります。1本200円くらい)が好きでよく使っています。
枠線の色は好みにもよりますが、やや落ち着いた赤や緑、紺、紫色などが墨の色と調和しやすくお勧めです。
明るい黄色などはパッと見て線が引いてあることが分かりにくいので、濃いめのからし色や黄土色くらいにトーンを落とすとしっくりきますね。
ペンが決まったら半紙に線を引いていきます。
下に敷いたコピーの線をなぞって書きますが、最初に外周の線を引くとその後が作業しやすいです。
この時、定規を普通に使うと定規の下にインクが入り込んでにじんでしまうことがあるので、私は定規の表裏を逆にして、紙と定規の端が接しないようにして書いています。
外周が書けたら、中の線も引いていきます。
線の太さは全て同じでも構いませんが、ペンが細書きと太書きを使い分けられるタイプなら、外周を太め、内側の線を細めで書くと仕上がりがスッキリします。
落款を入れる部分に横線を入れてしまわないように注意しましょう。
内側の線も全部引いて完成です。
初めは線が曲がったりしますが、何枚か練習すると上手になります。
慣れてきたら同じ方法で半切や全紙など大きな紙にも線引きできます。
また、実際に文字を書く時は写真のようにコピーの紙を横に半マスずらして写しながら書くと、中心線が分かって書きやすいです。
よろしければご参考までに。