かな書へいざなう大河ドラマ「光る君へ」紫式部の書道観と全書芸誌で学ぶ古筆
全書芸スタッフ
大河ドラマ「光る君へ」が2024年1月より始まった。
かな書道の全盛期「平安時代」が舞台とあって、書道界にとっては追い風となる注目の放映だ。
ドラマ中に出てくる筆を持つシーン。特に見入ってしまう。
紫式部・まひろ役の吉高由里子も藤原道長役の柄本佑も書道のシーンにはとても苦労したという。
机の上に紙を置き、枕腕法(ちんわんほう)や提腕法(ていわんほう)で筆を立てて安定した状態で書くのでも難しいというのに、左手に紙を持ちながら、右手に筆という不安定なスタイルで書くのはなかなか難しそうだ。さすがの俳優陣。
数々の古筆の伝承筆者とされる藤原行成(ふじわら の ゆきなり/こうぜい)や藤原公任(ふじわら の きんとう)も登場し、これがコウゼイかぁ~、これがキントウかぁ~と心の中でつぶやきながらストーリーを追っている。
歴史ものは、登場人物を覚えるのが大変。しかしドラマは、活字だけでなく俳優の演技を重ね合わせることでより時代背景が理解しやすくなり楽しめる。
このドラマの放映をより楽しめるよう全日本書芸文化院では、昨年末の文化庁・東京都 後援 2023年度【公募】第52回全書芸展会期中(2023年12月14日~25日開催)に、公開講座「かな書へのいざない」~紫式部の書道観~を企画。
この機会に、皆様をかな書へいざなうことを目的に2つの柱で大野幸子先生に解説をしていただいた。
2024年1月スタートの大河ドラマ「光る君へ」。主人公は紫式部。『源氏物語』『紫式部日記』『紫式部集』を書き上げた彼女の生きた平安時代は、「かな書」が発展した時期でもあります。それらの書物より垣間見ることができる紫式部の書道観を大野幸子先生(全日本書芸文化院運営総務・桜蔭中学高等学校非常勤講師)が解説します。
講座での2つの柱
- 紫式部が残してくれたもの(主な著作)
『紫式部日記』
『紫式部集』
『源氏物語』を通して平安時代の書道観を考える
紫式部の一生から紫式部をとりまく人々、主な著作にみられる書道観を抜粋。
- 全書芸誌で学ぶ古筆
臨書から倣書・創作への展開
全書芸誌(高校・一般)は、漢字とかなの両方が学べる月刊書道競書雑誌で、令和5年度の全書芸誌の編集委員(かな部)として編集に携わった大野幸子先生が全書芸で学ぶ古筆を解説。
仮名の種類
- 万葉仮名(男手):「真仮名」とも呼ばれる
- 草仮名:万葉仮名を草体化したもの
- 平仮名(女手):「仮り名」の意。「かんな」ともいう
- 片仮名:古くは「かたかんな」と呼ばれた
- 葦手(あしで):仮名の書体の一種
紫式部の一生
年表を用いて紫式部の誕生からの一生をつかんだ。
『紫式部日記』にみられる「書」に関する事項
紫式部をとりまく人々や和泉式部や清少納言についての「書」に関する事項を取り上げた。
『源氏物語』にみられる紫式部の書道観
時間の関係で資料のみの提供となったが、『源氏物語』でのそれぞれの「書」に関する事項を取り上げた。
- 帚木巻
- 夕顔巻
- 末摘花巻
- 絵合巻
- 少女巻
- 初音巻
- 常夏巻
- 梅枝巻
全日本書芸文化院発行「全書芸」誌を基に学ぶ❝かな❞~古筆の研究を主軸に据える~
いま、令和の時代に生きる私たち。
昭和・平成・令和と70年続く本院発行の全書芸誌を活用して、どのようにかな書道を学んでいくのか、会場の皆様へは、実際に全書芸誌をに手にとっていただいきながら全書芸誌の特徴と活用方法についての解説をした。
【テキストの位置づけ】
◇初心の方から無理なく学べるように
◇師範取得後も後進の指導および自身向上のためのテキストとして
- 初級(新規~5級)
- 中級(4級~1級)
- 上級(準初段以上)
全書芸誌「初級」(新規~5級)で学ぶ古筆
高野切第三種系を基に6ヶ月ごとに学ぶ古筆が替わる
- 高野切古今和歌集 第三種
- 粘葉本和漢朗詠集
- 近衛本和漢朗詠集
- 伊予切
- 元暦校本万葉集
- その他 法輪寺切や蓬莱切など
【新規~7級】
いろはうた単体
【6級・5級】
二字・三字連綿
全書芸誌「中級」(4級~1級)で学ぶ古筆
4ヶ月ごとに学ぶ古筆が替わる
【第一種系】
- 高野切古今和歌集 第一種
- 深窓秘抄
- 大字和漢朗詠集
【第二種系】
- 高野切古今和歌集 第二種
- 桂本万葉集
- 関戸本和漢朗詠集
【その他】
- 関戸本古今集
- 巻子本古今集
- 曼殊院本古今集 など
【4級・3級】
歌一首から抜粋された三句を臨書
【2級・1級】
歌一首を半紙にちらし書き
全書芸誌「上級」(準初段以上)で学ぶ古筆【古筆の研究】
4ヶ月ごとに学ぶ古筆が替わる
- 針切
- 小島切
- 香紙切
- 和泉式部続集切
- 一条摂政集
- 中務集
- 山家心中集
- 本阿弥切
- 石山切伊勢集
- 石山切貫之集下 など
全書芸誌「初級~上級」まで全員が学べる課題
【古筆の研究ー半紙】
準初段以上は、図版を半紙に臨書(1級以下は、初級・中級の半紙課題別途あり)
【古筆の研究ー条幅】
条幅(じょうふく)に臨書
【かな条幅】
短歌・俳句の創作・倣書語句を条幅作品にする
○倣書 (ほうしょ) …学んだ古典を基に、技法や特徴を活かしながら、別の語句を書くこと
散らしを学ぶ
【かな料紙創作】
【古筆の研究】の条幅臨書課題の語句を半紙判料紙または半紙に創作
散らし方は自由
○料紙(りょうし)…詩歌を美しく書くための装飾加工紙
倣書作品の制作手順を学ぶ
【かな半紙倣書】
短歌課題語句を倣書
かな書を学ぶためのヒント
- 用具・用材の準備
文房四宝の知識を得る - 古筆の臨書を重視
臨書を通じて変体仮名のバリエーションを増やす - 細字から大字への展開
- 多くの作品を鑑賞
出来れば紙媒体でなく本物を自分の眼で見る - 目標を持って学ぶ
級・段の取得、社中展や公募展への出品など
学書の友「古典を深める」コーナー(2023年度)
【同じ歌で異なる古筆】
- 書き手や体裁、紙などが変わることで、異なる世界観が生まれる
- 違いを比較して古筆を楽しむ
全日本書芸文化院 一般部の成績発表段級
大河ドラマ「光る君へ」・源氏物語を楽しむ参考図書
紫式部ひとり語り 山本淳子 著(角川ソフィア文庫)
著者が紫式部となり語っている語り口調がとても読みやすい。その時、その時で詠まれた歌と現代語訳が当時の情景へ読者を一気に引き込んでくれる。
公開講座「かな書へのいざない」~紫式部の書道観~の講師を務められた大野幸子先生おススメの一冊。
源氏物語と書生活 杉岡華邨 著(NHK出版)
日本人にとっての書の文化、日本人の美意識の高さ、をより身近に味わうことができる一冊。
○第1章:かなの誕生と美(1.日本人の創造した「かな」/2.かなの古典/3.かな芸術と散らし)
○第2章:源氏物語と書生活(1.紫式部の書道観/2.上流社会における書の重要性/3.知る術としての消息文/4.書道を学ぶ/5.王朝時代の生活と調和美/6.古筆と調度品)
墨(芸術新聞社)2019年1・2月号256号「かなで書く源氏物語」
『源氏物語』の世界がかな書作品を通して楽しめる書道専門雑誌。