創作表具の世界「第93回以白会表装展」~銀座・鳩居堂画廊~
全書芸スタッフ
昭和11年結成の80年以上の歴史ある「以白会」。
昨年に引き続き、12名の表具師による創作表具の展覧会『第93回以白会表装展』が開催。
9月3日(火)オープン初日は会場に全書芸展の表具も担当していただいている加藤聴松堂・加藤清美氏と中島霽月堂の中島大輔氏。
日頃、私たちの作品を裂地や紙などを補って、掛軸や巻物・巻子・額・屏風・襖・衝立・冊子・帖など様々な形に仕立てている表具師。
いつもは黒子の両者が、この展覧会では表現者。
加藤聴松堂・中島霽月堂を含む10の表具屋から12人の表具師が、創作表具を発表している。
今回の加藤聴松堂・加藤清美氏の作品は、書道研究「無心会」の創始者である田代秋鶴先生の色紙作品を表装したもの。
軸先に目を向けると、堆朱(ついしゅ)の技法が使われたものを用いて、作品に重厚感をもたせている。裂地の上部には金とプラチナのとんぼが羽ばたいていてチャーミングポイント。
一方、中島霽月堂・中島大輔氏は、毎年シリーズで小山みずほ氏の作品1×1(ONE TIME ONE)を表装。裂地に数字1が浮かび上がる斬新なデザイン。
もう一点は、大輔氏本人が描いたカモシカの日本画の周りに、光の加減によって見え方が変わる数種の黒い裂地が張り合わされ、様々な黒が表現されている。
表装について加藤清美氏にお話しを伺うと、
「寸法には工夫し図面を書いている。黄金比・白銀比など人間が美しいと感じる比率は、日本人も西洋人も同じ感覚。計算されて作り出されたものは飽きがこない」と、綿密に計算した上での作品制作であることを教えていただいた。
美しいと感じる心は、計算の上に成り立ったものであることが、新たな気づきであった。
加藤清美 氏のもう一つの作品は、本院の目良丹崖名誉顧問の作品を表装したもの。会場には書の作者ご本人もおられ、書と表装で美しく掛け合ったお二方。会場におられた外国の方が、「この作品が一番好き」と伝えにきてくれた瞬間に居合わせることができた。
緯糸には紬を用い、平織の金襴(金箔を使った紋織物)を組み合わせた作品。
図面を書き特注している軸先もさりげない美しさを醸し出していた。
書作品を彩る表装に目を向けられる貴重な展覧会。ぜひ皆様ご観覧ください。