墨
ペンネーム悪筆子
字が汚い読めないと長年、最近まで母に言われてきた。この言葉が書道を始めるきっかけになったのかもしれない。
子供の頃から可愛らしくて家庭の母になってもずっと何でも完璧にこなしさりげなく目立つのが実は好きな母だったが子供時代の母の姿はわからない。
三兄弟の真ん中で写真が一枚もないと話していた母の数少ない子供の頃の思い出話の一つに、終戦の時墨で教科書を塗り潰させられた話がある。
昨日まで正しいことが今日は間違いと言われたのよと戦争の愚かさを語っていた。
飢え殺人などなど戦争は本当に残酷で恐ろしいが、子供達に習字の道具で和紙でなく紙を塗り潰させると言うことも底知れず野蛮で愚かでぞっとすることだなあと改めて思うこの頃。幼い母はどんな顔してどんな字をお習字の時間書いていたのかなとふと思う。
